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養育費・婚姻費用に簡易算定表の利用、ちょっと待って! [離婚]

離婚や別居に直面した時、別居中の生活費(婚姻費用といいます)や離婚後の養育費をいくらもらえるのか、というのは大事な問題です。
当事者間で金額が決められない場合には、家庭裁判所の調停に委ねることになりますが、現状、実務では、「簡易算定表」が用いられています。ネット検索で入手できるのでご覧になった方も少なくないかと思います。
簡易算定表は、2003年に発表されましたが、以前の実務では、互いに、家計上必要な支出(住居費・医療費・負債・交際費など)の要否をめぐり、主張の応酬が続いて調査が長引き、解決までに長期間を要することが多かったため、こうした弊害をなくそうと、「簡易・迅速な算定」を目指して導入されたものです。
確かに、「勝手に家を出た奴には払わない」とか、無断で作った借金や怪しげな支出を理由に払わないなど、本来通らないような主張にこだわる相手に対しては、裁判所で簡易算定表により「これが相場」と説得してもらう方が早い、という面はあります。

でも、この簡易算定表、非常に問題が多いのです。

ご覧になった方は分かると思いますが、「何で単身の夫がこんなに多くて、子どもを抱えた母子世帯がこんなに少ないの?」と不公平感を覚えるような金額なのです。
これは、大きく2つの要因があります。
第1は、争いが多かった控除額を、必要性の有無や実際の金額と関係なく、収入ランクに応じた一定割合で、しかも多めに控除していること。特に、仕事に伴う費用(職業費)として通信費・小遣い・交際費等が、家計実態と関係なく、大きな割合に設定されています。
第2は、子どもにかかる負担を小さくみて、支払義務者(多くは夫)に甘く振り分けていること。14歳以下の子どもの生活費は大人の55%、15歳以上は90%に設定されていますが、保育料や塾など大人が切り詰めてでも子どもに支出する世の家庭の実態とかけ離れています。

日弁連でも、今年3月、こうした簡易算定表の問題を指摘して、安易に頼るべきではないとの意見を発表しています(http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2012/120315_9.html)。

調停実務では、簡易算定表の金額が示されて、両当事者の意見の調整が行われますが、時として、簡易算定表の金額を出発点に減額交渉となってしまう実態もあります。
今年から離婚届出書式に養育費の取決の有無等を記載する欄が新設されましたが、肝心の金額が低い額にミスリードされないよう、簡易算定表が全てではないということを念頭に置かれてください。
私達弁護士も、生活実態に即した養育費の取り決めに努めています。

相原わかば
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