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産科事故と補償制度 [医療事故]

 当事務所でも、お母さんになった事務所員がこの1年で2人、その前の1年間で2人、その前の1年間で3人と、なかなかの出産ラッシュです。

 彼女たちに,産科の医療過誤を沢山取り扱ってきた私の経験から、私はいつも次のようにアドバイスをしています。
 「病室がきれいとか、産後にディナーが出てくるとか、要するにアメニティを売りにしているところでのお産はやめなさい。いざというとき、緊急帝王切開ができるところで生みましょう」と。
 「いざというとき緊急帝王切開ができる所というのは、産科の医師が複数いて、麻酔科、小児科の医師もいて、休日夜間でも帝王切開が必要になったら、一時間以内に胎児を娩出できる体制があるところです。
 そして、医師が慎重派(最悪のことを予見できる医師)であることがのぞましいですね。

 「お産は病気ではない」と言われてきました。
 けれども、どうもそうとばかりはいえないように思います。
 30歳を過ぎての初産、安産型とはほど遠いスリムな体型、生理不順など・・・妊娠・出産能力が落ちてきているようで、帝王切開が必要なお産が増えているように思います。

 それは、裏から見れば、ちゃんと必要なときに帝王切開がスムーズにできなければ、赤ちゃんが死産になったり、脳性麻痺など重い後遺症を負って生まれてくるリスクが高くなったということです。

 いったん事故が起きてしまうとご家族は大変です。
 特に脳性麻痺で介護が必要になったご家族のご苦労は筆舌に尽くしがたいものがあります。
 その事故が医療機関のミスに因るものであれば、損害賠償請求が考えられますが、訴訟で救済を受けるのも、なかなか大変です。

 そういう問題をいくらかでも軽減するために、平成21年1月1日以降のお産に関しては、保険制度ですが、産科医療補償制度というのができました。
 「産科医療補償制度は、分娩に関連して発症した重度脳性麻痺児に対する補償の機能と脳性麻痺の原因分析・再発防止の機能とを併せ持つ制度」として創設されたものです。
 保険ですので,赤ちゃんを産もうとしている医療機関がこの制度に加入し、また3万500円の掛け金をはらっていないと,補償を受けることができません。
 また、先天性の障害や死産の場合も補償は受けられません。

 お産の時の事故で(分娩を担当した医師にミスがあるかないかに関係なく)重度の脳性麻痺で全介護が必要な場合には、総額3000万円(初年度600万円の他年額120万円が20年間)が支払われます。

 この制度を利用すれば、補償金が支払われるだけでなく、どうしてそのような事故が起きたのか原因分析も行われます。
 この調査は、制度上は、医師の責任を明らかにするものではなく、再発防止に役立てることを目的としています。

 けれども、原因が明らかになれば、医療過誤に詳しい弁護士が見れば、医師の責任追及が可能かどうか見通しを立てることができます。
 3000万円の補償金を受け取ったら損害賠償請求はできなくなるということはありませんから、不幸にしてお子様に障害が残ったときには、産科事故に詳しい弁護士に相談をなさることをお勧めします。
辻本育子

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