SSブログ

司法修習生の給費制を復活させよう! [自由法曹団]

 法曹資格を得るためには、司法試験に合格した後、司法修習生として1年間、裁判所、検察庁、弁護士事務所および司法研修所で修習を受け、その後「二回試験」と呼ばれる試験に合格する必要があります。
 二回試験の合格後、裁判官、検察官、弁護士とそれぞれの進路に進みますが、弁護士になる人が大半です。

 ところで、司法修習生は、公務員に準じた身分とされていて、この1年間は修習専念義務が課されますので、副業やアルバイトをすることは禁じられます。
 当然ながら、司法修習生にも生活がありますので、これまでは国から給費が支払われていました。
 ところが、2011年にこの給費制が廃止され、貸与制、すなわち、希望者に対して生活資金を貸し付けるという制度に変わってしまいました。

 給費制廃止の表向きの理由は、「弁護士になれば十分な収入が得られるのだから、税金で養う必要はない」というものです。
 しかし、弁護士の人数が増えて競争が激化し、新人弁護士の就職難が社会問題となっている今、「弁護士になれば十分な収入が得られる」なんて、どうして言えるのでしょうか…。
 司法修習の1年間に亘って生活費の貸与を受けた場合、修習終了時には約300万円の債務を負うことになります。
 親や兄弟から生活費の援助を受けられたり、自分の貯金が潤沢にあったりする人以外は、借金を背負わなければ法曹にはなれないというのが、今の制度です。

 そこで、給費制の復活を求めるため、ロースクール生、司法修習生、弁護士などで結成されたのが「ビギナーズ・ネット」という団体です。
 ビギナーズ・ネットのメンバーは、法改正を実現させるため、本職の合間を縫って、国会議員、マスコミ、市民に対して給費制の復活を訴え続けています。

 ビギナーズ・ネット立ち上げ以前にも、マスコミでは、貸与制になった場合の司法修習生の窮状について、様々な報道がされていました。
 たとえば、司法試験の受験資格を得るためにはロースクールに行かなくてはなりませんが(一部例外はあります)、過半数の司法修習生はロースクール時代の借金を抱えており、その平均額は約320万円です。
 貸与制でさらに約300万円の借金を背負うことになれば、法曹として働きだすときには、約620万円の債務を抱えた状態でスタートしなければなりません。

 このようなマスコミ報道だけでも、司法修習生の窮状は理解できますが、ビギナーズ・ネットの活動によって、司法修習生の声が伝えられるようになり、より一層、貸与制の不合理さが明らかになってきました。
 司法修習生の声の一例を挙げてみます。
Aさん「私は実家のある県での修習を希望しましたが、違う県に配属されました。交通費も自己負担ですので、裁判所や検察庁の近くに部屋を借りましたが、弁護修習先に指定されたのは、片道の電車代が1000円以上もかかる場所にある事務所でした。私は地元での就職を希望しているので、就職活動のための交通費もかかります。貸与額だけでは足りないので、情けない話ですが、年金生活をしている親の援助を受けています。」
Bさん「貸与を受けるためには、保証人を2人つけなければなりません。私は父親を亡くしているため、有利子の機関保証に頼らざるをえませんでした。」
Cさん「私は公益活動に奉仕する弁護士を志して司法試験を受けました。しかし、多額の借金を抱えて弁護士になるという現実を前にすると、お金にならない公益活動に尽力できるか自信がありません。」
 
 私は、ビギナーズ・ネットのメンバーが多く参加していた自由法曹団の5月集会で、司法修習生たちの訴えを初めて生で聞きましたが、想像以上に深刻な状況であることを知りました。

 弁護士は、法曹三者の一角として司法制度を支え、人権擁護の担い手となる重要な役割が与えられているからこそ、お金持ちだけでなく、多様な階層、多様な経歴の人が弁護士になることが求められています。
 司法制度改革が進められ、多くのロースクールが社会人出身者や法学部以外の出身者を積極的に受け入れていることも、多様な人材を法曹界に確保するためです。
 経済的事情から法曹への途を断念する人が出ないよう、そして、これからの人が希望を持って法曹人生を歩き出せるよう、給費制の復活を切に望みます。
(中西俊枝)

nice!(0) 

nice! 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。