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心肺蘇生の新しい常識 [医療事故]

 先日、九州・山口医療問題研究会の総会に参加してきました。
 総会の冒頭に、救急医療に携わっている医師から「救急蘇生ガイドライン」について講演があり、その中で、私たち弁護士に対する心肺蘇生のレクチャーがありました。
 聞くとするとは大違い…とても貴重な体験でしたので備忘のため書き留めます。
 
 まずは簡単に、心肺蘇生の手順について説明を受けました。
  ①肩をたたきながら大声で呼びかけ、反応があるかどうか確認する。
  ②反応がなければ、できるだけ多くの応援を集めて、119番通報をし、AEDを持ってくるようお願いする。
  ③胸骨圧迫を開始する。
   強く(5㎝沈むまで)、速く(100回/分)、絶え間なく
  ④AEDが到着したらすぐに電源を入れる。

 ここまで説明が終わった時点で、弁護士から「人工呼吸はしなくていいのですか?」という質問がでました。
 医師によると、以前は人工呼吸と胸骨圧迫をセットですることが常識でしたが、ガイドラインの改訂により、訓練されていない人が心肺蘇生をする場合には、より重要である胸骨圧迫だけをすればいいと変更になったとのことでした。
 もっとも、医療従事者などがいる場合には、人工呼吸もした方がいいそうです。
 以前、自動車学校で心肺蘇生を習ったとき、人工呼吸でなかなか合格点がもらえず困った私としては、ひとまず安堵しました。

 続いて、弁護士から「なぜ多くの応援を集める必要があるのですか?」という質問がでました。
 医師は、この質問に対しては、「すぐに分かりますよ」と不敵な笑みを浮かべるだけで答えを教えてくれませんでしたが、その理由はすぐに明らかになりました。

 続いて、人形を使っての実習開始です。弁護士が順番に胸骨圧迫をしました。
 …「強く(5㎝沈むまで)、速く(100回/分)、絶え間なく」胸骨圧迫をすることはとても大変です!
 できるだけ広く開いて膝を地面につき、体重を上手く使うのがコツだと言われましたが、胸が5㎝沈むまで押すことがまず大変で、それを速いペースで継続するというのはかなりの体力を要する作業でした。
 医師から「家族が倒れていると思って!」とハッパをかけられながら、一同、息が切れるまでがんばりましたが、多くの弁護士が不合格だと言われ、そうかと思えば、右手を骨折中のスポーツマン弁護士は左手一本でも合格点をもらっていました。
 こうして、参加者はみな、救急車が到着するまで胸骨圧迫を続けるには、できるだけ多くの人(できれば腕っ節の強そうな人)を集める必要があることを痛感しました。
 
 この次に、AEDの練習が始まりました。
 AEDは、心臓の状態から電気ショックの適応があるかどうかを判断し、必要であれば電気ショックを与える機器です。
 最近では多くの場所でAEDを見かけるようになりましたが、実際に触るのは今回が初めてでした。

 AEDは、メーカーによって多少の違いはあるそうですが、ほとんどは、電源を入れると自動音声で使い方が流れるので、初めての人でも問題ありません。
 まず、倒れている人の服を脱がせ、電極パッドを2枚、素肌に貼り付けます。
 すると、AEDが心電図の解析を始め、電気ショックが必要な場合は「ショックが必要です」という音声が流れます。
 この音声が流れたら、AEDを操作する人は、周囲の人に、倒れている人から離れるよう大声で指示を出し、ショックボタンを押します。
 そして、電気ショックの後は、また胸骨圧迫を開始します。
 ここから先はAEDが指示を出してくれますが、約2分おきに、胸骨圧迫とAEDを繰り返すことになります。
 胸骨圧迫はもう終わったと一安心していた弁護士たちでしたが、今度はAEDにハッパをかけられながら、胸骨圧迫を再開しました。

 実際に体験してみると、たしかにAEDは手順の説明をしてくれますが、音声はあまり大きくないので、注意して聞かないと周囲の音にかき消されてしまいそうでした。
 また、倒れている人に触れている人がいるままの状態で電気ショックを与えると、触れている人も感電してしまうとのことなので、AEDを操作するときには落ち着いて周りに指示を出すことが必要だということも学びました。
 女性に対して心肺蘇生を行う場合には、周りの人で外向きに円陣をつくって、できるだけ人の目に触れないよう配慮をするということも聞きました。

 今回の体験会はにぎやかで楽しいものでしたが、心肺蘇生の常識の変化を知り、また、実際に胸骨圧迫やAED操作の練習ができ、とても有意義な体験をさせていただきました。
 いざというときには、今回の経験を生かして冷静に対応したいと思います。
(中西俊枝)

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