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教科書採択問題にこれからの教育を思う [教育]

竹富島は、新婚旅行で行った。
白い砂浜がまぶしくて、海水浴には早かったけど、
当時、北海道に住んでいて、はるばる2600キロを来たのに泳がずにおられるか…と寒さをこらえて泳ぎ、
船を逃すと帰れない!とトライアスロンみたいに必死に走り続けた、若くて苦しい思い出の場所である。

その竹富島が、教科書の採択を巡って、注目を集めている。
発端は、3市町の教育長ら構成する地区協議会(石垣市・竹富町・与那国町など)で「育鵬社」の中学公民教科書が採択されたのに対し、その地区の1つである竹富町教育委員会が採択拒否したこと。
育鵬社は、「新しい教科書をつくる会」(通称「つくる会」)の出版社で、侵略戦争を正当化する立場で、南京大虐殺はなかったとか、慰安婦は強制連行してないなど事実を捻じ曲げた主張をしているところだから、到底容認できないという声があるのは、よく分かる。実際、公民教科書でも、明治憲法を高く評価し、現行憲法をGHQの押し付けだと記載する。9条の果たしてきた役割に言及はない、平等権に触れず、家庭での性別役割分業を社会を安定させるものと評価する…等々、かなり偏った内容だ。

ところで、教科書の採択は2つの法律が関係する。地方教育行政法では、採択権限は、各教育委員会にあると定める。他方で、教科書無償措置法では、複数の自治体が採択地区を作る場合は、同一の教科書を選ばなければならないと定める。採択地区の中で意見が一致しない場合は、どちらかの法に反してしまう、法律同士が衝突した状態にある。
竹富町が地区の決定に従わないことに関して、文科省は、当初、教科書の無償配布はできないが、竹富町が町費で無償配布することは法令で禁じられていない、との立場をとっていた。
しかし、ここにきて(自民党政権に代わって)、「違法状態」として文科省は、是正要求をする方針だという。
でも、これまでにも地元の教育委員会が、採択地区での答申と違う教科書を採択したり、採択地区での採択の流れを覆す選定がされたりした例はあった。

竹富町の教科書採択問題には、色々な論点があるけれど、やはり教科書の内容の問題が一番大きい。
子ども達に、どのような教育を保障するのかは、本来、国民の重要な関心事だ。
広域で一本化する教科書採択の制度では、地域の実情や現場の教師の意見が反映されず、容易に政治的な介入を許してしまう。
つくる会の教科書が教科書検定に通ったのは2000年。地域の根強い反対にも関わらず、採択地区や教育委員長などの主導で採択が広がっている。

教科書の採択については、都道府県教育委員会の指導と市町村教育委員会の決定の2段階があるが、審議の過程は公開されない。全員納得の合議で行われる場合もあるが、多数決が強行される場合も、つくる会の教科書採択を巡っては少なくない実情にある。
従前の例からは多数決は異例というが、単に採用意見が多数というだけではなく、「絶対嫌」という意見は反映してほしい。「害がある」「懸念する」と考える人が、一定数いるのに、それが全く反映されない仕組みは、危険なのではないか。
教育は政治的に中立でなければならない、ということは、憲法上の要請で、教育基本法にも定められている。憲法が、国民主権と基本的人権の尊重を謳い、教育を国民の権利と謳う下で、国家がその意思を国民に押し付けることは厳しく退けられなければならないのである。
教科書選定・採択は、政治的に利用される危険を常にはらんでいるが、賛成と共に反対が集まる、というのは多分に政治的争点となっている危険が高く、教育に用いるには慎重にしなくてはならない、といえるのではないか。

ところで、今回、この問題をおさらいしようと、ネット検索してみたら…
出るわ、出るわ、竹富町バッシングの立場からの言説が。つくる会と同様「自虐史観」を批判する立場。
もしかして、こういう教科書で学んだ世代が増えていくと、ますます、自国の過去の過ちから目を背ける風潮が強まるのかなと暗澹とする。
自分の国の過ちを指摘され、「嫌だ」という拒否感、感受性はどう受け止めたらいいのだろう。
自虐史観という人達も、外国の行為なら、原爆とか、アウシュビッツとか、シリアで使われた化学兵器とか…「非人道的だ」「人はどこまで残酷になれるんだろう」とある意味冷静に捉えられるんじゃないだろうか。

歴史や社会を学ぶには、「国」の枠を超えて、「人類の」として学ぶのがスタンダードにならないかなと思う。
「人はある状況に置かれたら、簡単に残酷になれる」「人類の歴史で多くの戦いが、どんなパターンで起きてきた」と、人類の、今を生きる私達の課題という意識で、人が兵器や武力に頼らない仕組みや紛争解決の方法を考える教育をやってほしい。
また、地域や教育現場が本当に望む教育が、その時々の政治に歪められないで、きちんとできるように支えていきたい。

相原わかば
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