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「住所」あれこれ 〜調停申立書の「住所」はどこを書いたらいいの?〜 [調停・裁判]

 皆様は,日常生活の中で,いろいろな書類にご自分の「住所」を書く機会があると思います。今回は,この身近な「住所」というものが法律の世界でどのように取り扱われているのか,少しだけご紹介したいと思います。

 そもそも「住所」とは,一体,何なのでしょうか? 大辞泉によれば,「住所」とは,①住んでいる場所,②法律で,各人の生活の本拠である場所と定義されています。②にある「法律」というのは,民法第22条「各人の生活の本拠をその者の住所とする。」を指しています。つまり,ある場所に住民票を置いていたとしても,その場所が「生活の本拠」(自分の生活に最も関係の深い場所)でなければ,法律上の「住所」にはならないのです。

 では,どうして「住所」を決める必要があるのでしょうか? それは,法律の世界では,「住所」が様々な基準として用いられるからなのです。

 例えば,身近な例としては,選挙権があるかどうかが挙げられます。公職選挙法第9条第2項は,「日本国民たる年齢満20年以上の者で引き続き3か月以上市町村の区域内に住所を有する者は,その属する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する。」と規定しています。ですから,Aさんが福岡市長選挙に投票するためには,引き続き3か月以上福岡市内に「住所」を持っている必要があるのです。

 この他,管轄(どの裁判所で法的手続を採ることになっているか)があるかどうかも重要です。民事訴訟法第7条は,「訴えは,被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。」(第1項),「人の普通裁判籍は,住所により,…(中略)…定まる。」(第2項)と規定しています。ですから,AさんがBさんに対して民事訴訟を起こす場合,基本的には,Bさんの「住所」を管轄する裁判所に訴状を提出する必要があるのです。

 当事務所がよくご相談を受けるのは,離婚調停を申し立てる際,ご自分(申立人)の住所の欄をどのように書いたらよいかというものです。申立書は,コピーが相手方に送られますので,相手方に知られても構わないことだけを書くよう注意しなければなりません。そこで,配偶者(相手方)に現在の住所を明かすことができない事情がある方,例えば,家庭内暴力から逃れるために別居した方は,次のようにすることをお勧めいたします。

⑴あなた(申立人)の住所の欄には,同居していた頃の住所等,配偶者(相手方)に知られても構わない住所を書く。

⑵申立書と一緒に提出する「連絡先等の届出書」という書類に現在の住所を書く。

⑶「連絡先等の届出書」を配偶者(相手方)に見られないようにするため,「連絡先等の届出書」の上に「非開示の希望に関する申出書」という書類をホチキスで付けて提出する。

ただし,「非開示の希望に関する申出書」という書類を付けたからといって,必ず非開示にしてもらえるわけではありません。非開示にするかどうかは,裁判官が判断されることになります。ですから,あなたがどうして非開示にしてほしいのかの理由を「非開示の希望に関する申出書」にきちんと書いておくようにしましょう。

弁護士 石本恵
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