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「LEAN IN」 Facebook COO(最高執行責任者)の考える男女平等 [男女共同参画]

シェリル・サンドバーグのリーン・インを読んだ。

 「もっと多くの女性が権力のある地位に就くことです」

 リベリアで、女性達の非暴力抵抗運動を組織して内戦終結に尽力し、2011年にノーベル平和賞を受賞した女性、リーマ・ボウイの、「内戦の恐怖や集団レイプに苦しむ女性たちを助けるには、私たちアメリカの女性はどうしたらいいでしょうか」との質問に対する答えである。

 シェリルも同じように考える。
 指導的な役割を果たす女性がもっと増えて、女性が抱える問題やニーズをもっと強く主張できるようになれば、すべての女性が置かれた状況は改善されるにちがいない。
 
 シェリルは、GoogleからFacebookに転職をし、執筆当時はFacebookの最高執行責任者の女性。ハーバードのMBAを取得してマッキンゼーに入り・・・という経歴をもつ、いわゆるスーパーウーマンである。そうすると、「はいはい、私達とは違う、雲の上の女性の成功譚ですね」、という気持ちになって、この本を受け入れない人も多いかもしれない。またそうやって、自分と関係のない世界の人だと切り離す方が、心穏やかかもしれない。

 けれども私は、そうやって、彼女が懸命に努力をして、壁にぶちあたり、もがきながらつかみ取ってきたものを、彼女の持って生まれた能力・体力・環境の豊かさのせいにだけしてはならないと思う。

 私達だって、懸命に努力して、なんとかやりくししているこの毎日を、「あなたは恵まれているから」、「ラッキーだから」の一言で片付けられたら、やっぱり少し嫌な気持ちにならないだろうか。

 私達は、私達なりに、彼女から、意思や意欲を持ち続けること、彼女がぶつかった壁やその乗り越えかたを学ぶことができるように思う。

 気持ちのハードルを取り払って彼女の本を読めば、彼女の悩みには、私達の悩みと変わらないものがたくさんある。
 女性は、社会に築かれた障壁のほかに、自分自身の中にも障壁を持っていること。
 たとえば、大望を掲げようとしないこと。それは、自信がないからでもあるし、一方踏み出すべき時に引いてしまうからでもある。
また私たちは、自分の内にネガティブな声を秘めていて、その声は人生を通して囁きつづける。言いたいことをずばずば言うのははしたない、女だてらにむやみに積極的なのは見苦しい、男より威勢がいいのはいただけない・・・。
 加えて私達は、自分に対する期待を低めに設定する。相変わらず家事や育児の大半を引き受けてもいる。夫やまだ生まれてもいない子どものために時間を確保しようとして、仕事上の目標を妥協する。

 彼女自身が、こうした内なる障壁との戦いを繰返し、自分自身の内なるハードルを乗り越え、この男性社会のなかで、女性が男性と闘うのではなく、互いに協力的に仕事をしていく方法がないかと模索をし続けている。

 また彼女は、自分が指導的地位についた後にも、多数の女性が、自制的な行動をとっている姿を目にし、あるいは、未だに自分もそうしてしまうことを告白する。
 女性は男性と比べて、自分を強く売り出すことが苦手で、むしろ自責的で反省しがちであること。女性は責任ある地位に不安感を持ったり、自分はまだその立場に見合わないように思ったりしがちであること。
 男性が集まる会議で、同じテーブルにつかずに壁際に座ってしまうこと。講演者への質問が「あと数人」と制限される時、女性は遠慮して手を下ろしてしまいがちなこと。
 私にも思い当たり、あるいは私の周りで頻繁に見かけることばかりだ。

 さらに女性には、育児と復職・両立をめぐる様々な問題と現実や、子どものいる女性と子どものいない女性との間での賃金の水準の厳然たる違い、長時間労働をする男性の妻は、高い確率で離職をしてしまう現状などもある。

 彼女は言う。

 行き詰まりを打開するには、声をあげつづけなければならないし、ほかの人にもそうするよう励まさなければならない。言葉は意識を変え、意識は行動を変え、行動は制度を変えるだろう。

 簡単でないことは承知している。職場における男女差別の問題を取り上げるのは、泥沼に足を踏み入れるようなものだ。平等の扱いをめざしながらも、男女の違いは認めざるを得ないのだから、そもそもこの問題自体が矛盾をはらんでいる。

 けれども、議論を避けるのは、前に進む途を閉ざしてしまう。私たちは、声を上げ、耳を傾け、議論し、反論し、教え、学び、そして変わっていかなければならない、と。


 この本では、主にアメリカに関するものであるが、女性のおかれた状況についての統計資料も読みやすく豊富に示されている。また、これまでにあまり取り上げてこられなかった、女性の内なる障壁(前に出にくかったり、自分を低く評価しすぎたり、自信を持てなかったりハードル)について、彼女の経験をとおして、具体的に丁寧に検討がなされている。

 そうした点で、特別にトップを目指す、高い地位を目指すという意欲があるかないかにかかわらず、全ての働いてみようという気持ちのある女性にとって、とても参考になり、かつエールを贈ってくれる本ではないかと感じられた。

郷田真樹
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