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建築アスベスト訴訟(東京高等裁判所判決)国と企業に勝訴! [調停・裁判]

10月27日、建設アスベスト訴訟で、東京高裁が、高等裁判所で初めて、企業の賠償責任を認めました。
また直前の24日にも、横浜地方裁判所が企業責任を認める判決を出しました。

建設アスベスト訴訟は、建築作業従事者(大工・解体工・電工・左官・現場監督など)が、建材加工などの作業時に、建材に含まれるアスベスト粉じんにばく露し、長い潜伏期間を経て肺がん・中皮腫などアスベスト関連疾患になったり死亡したりした被害について、危険を知りながら製品を販売した建材企業や、規制を怠った国に対して、責任を追及している訴訟です。
北海道、首都圏、大阪・京都・福岡で訴訟が係属しており、当事務所からも弁護団に加わって取り組んでいます。

国の責任は、2012年12月に東京地裁が、必要な規制を怠ったと判断して以来、各地で、責任を認める判決が重ねられています。

他方、企業については、危険性を知りながら対策をせずに販売した違法性やその根拠となる事実関係は認められつつも、具体的に、各被害者がどの企業の製品から被害を受けたという因果関係の立証が困難であるため、長らく責任が認められるには至りませんでした。

 加害者が複数の事案では、被害者に不可能な立証を強いることがないよう、加害行為の参加者達を特定することで立証責任を軽減する共同不法行為の理論があります(内部割合は参加者達の問題として被害者には問わない)が、多数の企業をどのように線引きし、どのように責任を認めるか、過去の適用例にない課題を抱え、要件が争われてきました。
建築作業では、次々変わる多数の現場でそれぞれ使用した製品を特定するのは難しく、しかも長年の潜伏期間後に発症するので証拠も入手困難です。
それでも、多数の現場を経験したからこそ、この作業に従事した以上は当然これら企業の製品は日常的に使っていた筈だというメジャーな数社は特定できます。
大量に流通させて大きな利益を得ながら、生じさせた被害の責任は全く負わない、ということが許されるのか、仮に対象企業を厳密には確定できなくても、オールオアナッシングではなく、少なくともこの範囲の企業が責任を負うことは間違いないといえる限度で応分の責任は認めるべきだ、ということを私たちは主張してきました。

最初に、風穴を開けたのは、2016年1月の京都地裁判決でした。形式的な要件の当てはめではなく、理論を構成する利益衡量に遡って、企業責任を認めました。
認められてみれば、これまでの「規制を怠った国だけが責任を負い、製造販売して利益を得た張本人は負わない」という結論がいかにバランスの悪いものだったかがよく分かります。

今回の東京高裁判決は(直前の横浜地裁判決も)、企業責任がゼロではありえないという方向性を力強く裏打ちしたものと受け止められます。
具体的な線の引き方は三者三様で異なりますが、むしろ枠組み作りの試行錯誤に突き動かすだけの救済の必要性が理解されたと思われます。

建築現場では、広くアスベスト建材が用いられたことから、粉じんばく露による被害者は、今後も増えることが予想されます。また、今後、建物の解体のピークを迎え、被害を防ぐため実効性ある防止策が求められます。

建設アスベスト訴訟は、裁判による賠償だけではなく、補償基金による救済制度づくりや今後の被害防止対策を含めた全面解決を目指しています。
私たちも、今回の判決を踏まえて、早期全面解決に向けて、一層の取り組みをしていきます。
また、福岡でも第2陣訴訟を起こすべく準備を進めています。
ぜひ応援してください。

相原わかば
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