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災害時 LGBTの方たちへの理解を、一人で悩まず相談を!

災害とDV・性暴力について文章を書いたところです。

女性・子どもの脆弱性、などと言われたりしますが、
社会のなかで構造的に弱い立場にいらっしゃる方は、
災害・復興時などに、さらにその弱さ(脆弱性)が増し、
平常時よりも辛い思いをすることがあります。

LGBTなどとも表現される性的マイノリティの方達についても、
プライバシーが確保されず、常時、第三者の目にさらされる環境にいる場合には、
こうしたことに理解のない人達からの視線や接触を遮ることができず、
平常時より辛い思いをされることがあるかもしれません。

また、自分自身が性的マイノリティだということを他者に隠しているような場合には、
そのことを隠すために多大な努力を要したり、
隠しきれなかった時に「ばらすぞ」と脅されたり、
さまざまな苦労があるかもしれません。

自分のパートナーが誰であるかを秘密にしているような場合には、
パートナーの安否を大手を振って探せず、
互いの安否確認ができるまでに身を切られるような辛い思いをしたり、
あるいは、周囲の目が気になって、
互いに一緒の避難所に入ることができなかったりするかもしれません。

しかも、そうした辛さを、秘密を知らせてもよいごく少数の人にしか出せず、
身のうちにかかえて生活をするほかない辛さもあると思います。

幸いにして現在は、SNSなども発達し、以前に比べて、
さまざまな、信頼しうる性的マイノリティ支援団体などへの、
アクセスがしやすくなっていると思います。

どうか、辛い思いを誰かと共有しながら、
この大変な時期をご無事に乗り越えられますようにと願っています。

また、平常時であれ、災害・復興時であれ、
脅し、暴力、DV・性暴力(男性被害者や性的マイノリティの被害者も含む)は
許されませんし、犯罪にさえなりえます。

性的マイノリティの方たちについて、これまでの女性被害者支援のような、
相談・支援体制が整備されるまでには、まだまだ時間を要するかもしれませんが、
現在は、行政機関なども含め、性的マイノリティの方達についての、
相談・支援体制の整備の必要性がうたわれはじめています。


被害にあわれた時、自分でどう対応をしたらよいかわからない時、
どうか一人で悩みを抱え込まず、
ご自身が信頼できる、話をしてもよいと思える身近な方からでも、
行政や法律家といったところからでもかまいませんので、
アクセスをしてみて、もしも相手が信頼できると思えた時には、
遠慮なく、あなたの悩みについての相談をしてみてください。


また、自らが被災者として日々を必死に乗り越えていらっしゃる皆様や、
被災地や全国で、被災地に思いをはせあるいは援助を続けているたくさんの人達に、
山積している膨大な質・量の越えていくべき課題のなかで、
表立って目に見えにくい事柄ではあるけれども、
確実にLGBTと言われる性的マイノリティの方たちも確実に存在し、
それぞれが同じく被災者として課題を抱え、
人知れず悩んでいるということに思いをはせ、
理解や共感、支援の気持ちをよせていただけますと、とてもうれしいです。

(郷田真樹)
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災害時のDV・性暴力〜被害をうったえることは、わがままではありません。 [DV]

「皆さんが被災して大変な時に、
 こんな家庭内のつまらない揉め事を相談する、
 私はわがままでしょうか?」(DV被害者)
 
「そこでしか生きていけないときに、
 誰にそれを語れというのですか?」(性暴力被害者)


東日本大震災
「災害・復興時における女性と子どもへの暴力」に関する調査報告書 に出てくる、
いたいたしい言葉です。

災害・復興時、多数の人が極限的かつ長期的なストレスにさらされ、
社会的インフラも整わないなかで、平常時であってもおこりえた、
DVや性暴力などの被害者が救済されにくくなるだけでなく、
災害による被害の増加リスクもあることが指摘されています。

たとえば、上記調査報告書には、さまざまな胸の痛む被害経験が述べられています。

避難先で物資を融通する権力のある男性に性行為を強要されても、
「いやなら、ここにいられなくなる」と言われ応じざるをえなかったうえ、
「騒いで殺されても海に流され津波のせいにされる」といった恐怖から、
「その後に誰にも言えなかった」という話。


物資を融通してもらうなら、性的に搾取をされても仕方がないと思われるためか、
他の女性から性的被害を「あたりまえだ」と言われた話。


加害男性側も辛い立場にあるためか、
男性が女性の毛布に入り込んでいても、
周囲が「若いから仕方がない」と見て見ぬふりをしてしまった話。


支援女性が、被災者から被害を受けても、ボランティアリーダーから、
「支援者ボランティアが被災者をしかり指導するとは、もってのほか」と
暴力を容認されてしまったという話。



何れも、加害者も被害者もギリギリの、平常心を維持し難い状態下での
出来事だったのかもしれません。


けれども、だからといって、
女性に対して、DVや性暴力を加えてよいわけではありません。


平常時であれ、災害・復興時であれ、女性に対する暴力は許されません。

それは個人の人権や尊厳を損なうものです。

たとえば、レイプは「魂の殺人」と言われるほどに、
被害者の人生を、一生にわたって左右するほどに、深く深く損ないうるものです。
 

また、多数の人が「レイプ」と言われて想像するような性暴力等に限らず、
何かを融通すること(物資の融通等に限らず、施設内で目立たず、いじめられず、
平穏すごせることも含む)と引きかえに、
暗に明に性的関係を求めることもまた、ひとつの性暴力です。
一見、女性がそれに同意をしているように見えたとしても、
極限状況下でのその取引は性的搾取に他なりません。


今、被災地では、たくさんの人達が、助けあい、手を取り合って、
被災地で懸命に日々をすごしています。
全国の皆さんからの温かく感動的な支援がたくさん届けられています。

そうしたなかで、どうか、DVや性暴力といった被害が発生しませんようにと、
切実に願っています。

それでも、不幸にして被害にあってしまったという方は、どうか、
「わがままかもしれない」、「仕方がないのかもしれない」などと躊躇をせず、
声をあげてください。泣き寝入りする必要はありません。


もしかしたら、混乱時した状況のなかで、
最初の相談先で適切な対応を受けられないこともあるかもしれません。

それでも、たくさんの人達が、
災害・復興時のDV・性暴力といった被害が生まれないことと、
不幸にして被害にあってしまった方が適切な相談・支援先にアクセスができて、
支援をしたいと思っていることを知って、ぜひ誰かにつながっていってください。

そして、ともに歩みながら被害を回復し、災害に加えて、さらに傷ついてしまった
あなたが、それでも、しっかりと、あなたらしい人生を取り戻していくことを、
心から願っています。

なお、こうした話をすると、
被災者・支援者等を侮辱しているのか、信頼していないのかといった
ヒステリックな意見も出されがちです。

実際、上記調査報告にも、報告者らが、
阪神淡路大震災時の経験をふりかえって、
「神戸・沖縄 女たちの思いをつないで~私たちは性暴力を許さない!」
という集会を開いたところ、
一部マスコミなどから、
「被災地で性暴力はなかった。証拠がない、全て捏造である」といったバッシングを受け、
「性暴力を許さない、と声をあげたことだけで、なぜこれほどにバッシングされるのか」と
深く傷ついた、という話がでてきます。


平常時でさえ、DV・性暴力といった気持ちの落ち込むような話に、
共感し、あるいは過去を思い出し、苦手とされる方もいらっしゃいますから、
災害・復興時にこのような文章を書くことそのものが、
DV・性暴力とは縁遠いと自認していらっしゃる多数の人達のお気持ちも含め、
傷つけ、ご不快な思いをさせるのではないかと、逡巡をしました。


けれども、平常時のDV・性暴力の発生状況からみて、
非常時にだけそれらが発生していないと考えることは不自然です。
加えて、災害復興時にこれらのリスク増加は、既に国際的な知見になりつつあります。


そうした事実を前提に、社会全体で、復興支援時においても、
災害対策(避難所運営なども含む)の様々な場面で女性を適切に参画できるようにし、
女性の目をいきとどかせると共に男女格差をなくしていく努力が、
やはり必要なのだろうと思います。


ですから、多数の人達に、考えたくないことではあるけれども、
災害・復興時にも、DV・性暴力の問題が存在し、
そのリスクは平常時よりも増加するリスクがあるという指摘を知っていただき、
女性達がそのような被害にあわないよう、互いに声をかけ、目配りをし、
そうした被害が発生しないようにお力をお貸し頂きたいと思い、
あえてこの文章を掲載することにしました。


また、もしそういう被害を耳にしたときに、
災害・復興時だから仕方がない、加害者だって大変なんだといって見過ごさず、
被害を被害として受け止めて、被害者に寄り添おうと思ってくださいますと、
本当にありがたいです。


最後に、不幸にして被害にあわれた方が1人でもいらっしゃるならば、
その方に、たとえ大変な非常時であったとしても、
あなたは被害について語る権利があるし、
医療的・精神的ケアはもちろんのこと、
行政支援や法律的支援など、必要な支援を受けるべきであるし、
それは決してわがままなことではなく、あたりまえのことです、
ということが伝わればと願っています。


あらためて、こうした文章で、ご不快な思いをされた方がいらっしゃいましたら、
深くお詫び申し上げます。


(弁護士・郷田真樹)
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