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最高裁判決! 性同一障害による性別変更と嫡出子認定について [性的マイノリティ]

 性同一障害による性別変更と嫡出子認定について、
 最高裁判決が出されましたね!

【非配偶者間人工授精によって、男女(夫婦)間に子が生まれた場合】
A 男性(夫)
B 女性(妻)
C B(女性・妻)が、第三者(A以外の男性)から精子提供を受けてもうけた子
  →これまで、Cは、嫡出子として取り扱われてきました。

   なお、国内ではこれまでに、1万人以上の子どもが、
   非配偶者間人工授精で生まれている、とも言われています。

【今回の当事者】
ア 性同一性障害があり、特例法(下記)により、
  女性から男性に性別を変更した男性(夫)
イ ア(男性)と法律上の婚姻をしている女性(妻)
ウ イ(女性・妻)が、第三者(ア以外の男性)から精子提供を受けてもうけた子
 
  →法務省はこれまで、ウ(子)を、
   「嫡出子として取り扱わない」としていました。

【最高裁判決(平成25年12月10日付決定)】
 最高裁は、特例法を利用して、
 男性への性別取扱変更の審判を受けた人は、
 以後は法律上男性とみなされるのだから、他の男性と同じように、
 婚姻も、妻が産んだ子供の法律上の父になることもできる、という趣旨の、
 すっきりと明快な決定をしたようです。

 「特例法3条1項の規定に基づき男性への性別の取扱いの変更の審判を受けた者は,以後,法令の規定の 適用について男性とみなされるため,民法の規定に基づき夫として婚姻することができるのみならず, 婚姻中にその妻が子を懐胎したときは,同法772条の規定により,当該子は当該夫の子と推定されると いうべきである。」

【最高裁判決を受けて思うこと】
 ここまで読まれた方にはすでにおわかりのように、
 これまでの法務省の運用は、父となる人(特例法上の男性)が、
 「一度戸籍に女性として登録されたことがあるか否か」のみによって、
 異なる取り扱いをしてきたものです。

 そのような取り扱いが、
 性同一性障害者の差別的取り扱いにあたることは、明らかです。

 過去に女性と登録されたことがあったとしても、
 その人の心身が男性であることを、家庭裁判所が、
 医師の診断等をふまえて確認し、
 法律上男性として取り扱うという審判を下しているのです。

 そのような人に対して、「過去に女性と登録されたことがない」男性との間で 
 異なる取り扱いをする必要は全くないと、私は考えます。
(なおこれについて最高裁では、5人中2人の反対意見が出されており、
 それぞれに検討事項が挙げられてはいます)。

 反対意見が指摘する他にも、子どもが出自を知る権利がどうなるのか?など
 いろいろな論点は考えられます。
 けれどもそれは、「性別取扱変更をしたことのある親とその子ども」に
 限った問題ではなく、「非配偶者間人工授精をした親とその子ども」一般に
 等しくいえる問題ですから、
 性別取り扱い変更がある場合にのみ異なる取り扱いをする根拠にはなりえません。

 性同一性障害があることは、それだけで身体的な負担が相当に重いうえに、
 社会的無理解なども重なり、自分らしく、心身ともに快適に生活していくためだけに
 いくつものハードルを乗り越えなければならないと言われています。

 自分が自分を受け入れて、生きる方向性を見つけていくこと。
 家族や友達に本来の自分を受け入れていってもらうこと。
 私達が何気なくしているそうしたこと自体に、
 大変な努力を伴うことも多々あります。
 
 本人のとまどい、親の心理的抵抗や受診へのためらい、
 学校の誤解や無理解、専門機関の不足などにより、
 身体とメンタルそれぞれについて、
 医療的・専門的なケアを受けることも容易ではなく、
 うつ病などに罹患したり、自殺してしまう人もいたりします。

 性同一性障害は、推計患者数約4万6000人との研究があります。
 また、小中学校の教員200名のうち、4人に1人が、
 身体的な性別に違和感を持つ生徒が1〜2人はいた、と回答したという研究もあるなど、
 決して人ごとではありません。

 そうしたことを考えるとき、司法や行政が、
 その人があるべき本来の姿で生きていくことを
 せめて法律の面からだけでも応援できればと思います。

 今回の最高裁決定を、心から支持しますし、
 今後の法務省による速やかな運用改善を期待します。

 また当事務所は、いわゆる性的マイノリティと言われる人達
 (性同一性障害の方、同性愛の方など)の権利も擁護し、
 1人1人の人が、その人らしく生きていける社会を目指したいと思います。

【参照:特例法】
 「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(平成15年7月成立)

 家庭裁判所は、性同一性障害がある人で、下記の要件を満たす人は、
 医師の診断書や治療経過を示し、家庭裁判所に、
 「性別の取扱いの変更の審判」を申立てることができます。
  1  二十歳以上であること。
  2 現に婚姻をしていないこと。
  3 現に未成年の子がいないこと。
  4 生殖腺がないこと、または、生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
  5 その身体について、他の性別に係る身体の性器に係る部分に
    近似する外観を備えていること。
 
 ※平成16年7月から平成17年6月の1年間で、
  249件が申立てられ、既済218件のうち、
  208件が認容されています(司法統計より)
 
(郷田真樹)
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