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行間を想像するヨロコビ [日常]

最近、仕事と日々の生活に追われて読書をする時間がほとんど取れないのが残念ですが、それでも、好きな小説やマンガは何冊かあります。

例えば、私は、東野圭吾さんの「白夜行」と宮部みゆきさんの「火車」が大好きです。
実は、この2冊、どちらも犯罪小説です。
主人公が罪に身を落としていく悲劇ですが、犯罪を推奨する内容ではありませんので悪しからず。

どうして、こういう小説が好きなのかなあと考えました。

「白夜行」には2人の主人公がいます。
2人は辛い過去を共有し、深いところで繋がっています。
でも、小説では、各章1人ずつのエピソードが交互に綴られていき、2人の繋がりは直接描かれていません。

「火車」の主人公は、最後まで顔を見せません。

どちらの小説も、主人公達が、どういうことを考え、何をしていたのか、なぜだったのかを、読者に行間から想像させる構成になっています。
想像させる場面がたくさん用意されていて、読者をぐいぐいと引き寄せます。
お二人の作家の絶妙なストーリー展開に脱帽してしまいます。

はて、物書き、という面で見たら、弁護士の仕事も似ているのでは?
いえいえ、同じ物書きでも、目指さないといけない方向性は全く逆です。

弁護士は、こちらの主張を相手方に伝え、また、裁判所を説得するのが仕事です。
そのためにたくさんの書面を書きます。
こちらの主張したいことをその書面だけで100%伝えきる必要があります。
「行間を読み取って欲しい」なんて、到底許されません。
ですから、書面を作成するときに、本当にこちらの主張が先方に伝わっているか、
かなりの神経を使います。

だから、想像力が膨らむ小説に出会うと、ホッとするような気持ちになるのかなあ。

ちなみに、マンガでは吉田秋生さんの「櫻の園」が好きです。
女子校の演劇部を舞台に、部員達の思春期を丁寧に描いた心優しい物語です。
このマンガでも、主人公達の後ろ姿とか、ぎゅっと握りしめた手が描かれていたりして、その代わりに表情が敢えて描かれないコマがたくさん出てきます。
この子は今、どんな表情をしているのかな、と想像させるところが散りばめられています。
私が高校生のころに出会ったマンガですが、今、読み返してもジーンと胸が温かくなります。

柏熊志薫
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