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有期雇用「最後の更新」っていわれたら… どうする、不更新条項への対応

 有期雇用で働く人が増えています。
 有期雇用とは、3か月とか半年など雇用期間が決まっている働き方で、これまできちんとした統計がなかったところ、推計を大幅に上回る1420万人超、農林業を除く雇用者の4人に1人(25.9%)に上ることが、総務省の調査で分かりました。
 本来は、一時的な仕事や家計補助的なパート等が典型の筈でしたが、実際には、更新が繰り返されて、正社員が行うような継続的で責任の重い仕事でも、身分は「パート」で有期雇用とされる例が往々にしてあります。
 特に近年では、新卒で仕事を探しても有期雇用ばかり…と、生計を支える働き手までに及んでいます。
 
 こうした有期雇用の広がりですが、これは、専ら雇う側の都合によります。
 通常の労働契約では、労働者を解雇するには、正当理由や厳しい要件が必要とされて簡単ではありませんが、有期雇用なら、期間満了時に雇止めにでき、雇用主に都合がいいのです。
「有期雇用を望む労働者もいる」という声もありますが、本当でしょうか。
確かに、労働者側でも、生活との両立等のために、短時間勤務や責任の軽い勤務を希望する場合は少なくないでしょう。家事育児に加え、特に昨今では介護の問題も切実です。
 でも、こうした需要には、労働時間や業務内容に差を設ければ済むことであって、「有期」である必要はありません。
 にもかかわらず、短時間勤務等を望む場合には、不安定な有期雇用しか道がないという実態にあります。

 さて、有期雇用者を不安定な地位から守るため、昨年、労働契約法が改正され、今年4月から全面施行されています。
 ポイントは以下3点。
① 契約更新の繰返しや更新が期待できる事情等がある場合、雇止め禁止に
② 5年を超えて契約更新がある場合、無期契約へ変更が可能に(今年4月以降の契約時から5年を数えます)
③ 無期契約との不合理な差別の禁止
 
 この中で②の「5年ルール」の影響は大きく、使用者側は、無期契約への変更を要求されることを警戒し、一部では、これまで更新してきた契約を雇止めにする動きが出ています。
 ですが、こうした安易な雇止めに対しては、①の雇止め禁止で対処していく余地があります。

 しかし、より巧妙な、無期契約への変更を避ける方策が出始めています。

 たとえば、早稲田大学が、非常勤講師の通算契約期間を最長5年とする就業規則の変更を発表して物議をかもしていますが、同じ動きは他の大学でも出ています。
就業規則は、労働者に不利益に変更することは原則認められず、合理性・必要性・手続きの適正等が厳しく問われるところ、一方的に契約期間に上限を導入する就業規則は効力を否定される余地があります。

 また、個々の労働契約としては、契約更新時の書面に、「更新は今回が最後とする」という条項(不更新条項)を入れる動きがあります。
 不更新条項をつきつけられたら、「『それは困る』と今回断れば直ちに雇止め。仕方がなく応じれば次回に雇止め」という、進退きわまる事態に陥れられます。

 こうした不更新条項の効力を認めるかどうかについて裁判例では判断が分かれています。こうした状況でなされた不更新の合意は「任意」とはいえないと言って、効力を否定した例がある反面、署名押印したことを重視して、文言どおり不更新を認めた例もあります。

 ただ、裁判例では「任意か否か」の判断にあたり、雇用主側から、不更新条項を加える必要性につき合理的な説明があったのかどうか等、諸事情が検討されています。
 ですから、安易に「最後の更新」などと言われた場合は、争う余地が十分にあります。
いずれにしても、職場のトラブルの多くに共通することですが、その場ですぐに返事や署名をせず、「持ち帰って検討する」との対応や、異議を述べる、それがしにくければ質問文書を差し入れるなど、任意ではないことを示し、形にとどめることが大事です。
 そして、迷わず専門家に相談しましょう。
 仮に、不本意に署名等をしてしまっても諦めず、事後的にでも異議を留めておくことが重要です。
 
(相原わかば)
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