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民法766条改正後の、養育費・面会交流について考えるべき課題(日弁連意見書から) [離婚]


*民法766条改正(平成23年5月27日改正、平成24年4月1日施行)*

平成24年4月1日、改正民法が施行され、766条に、協議上の離婚をするときに協議で定める「子の監護について必要な事項」の具体例として、「父又は母と子との面会及びその他の交流」(面会交流)及び「子の監護に要する費用の分担」(養育費の分担)が明記されました。  そしてその際には、子どもの利益が最優先されなくてはならないことも明記されています。  これらは、子どもの権利条約(1989(平成元)年国連が採択・翌年発効、日本は1994(平成6)年に批准・発効)の趣旨にそう改正です。


*社会の実情*

このような法改正が行われる前提として、平成23年段階で、離婚をした夫婦の6割以上が養育費の合意をしておらず、8割以上の子どもが養育費の支払いを受けておらず、7割以上が面会交流の取り決めをしていないという社会実態があります(厚生労働省2011(平成23)年度全国母子世帯等調査結果報告より)。


*離婚届の記載欄の変更*

 この民法改正を受け、かつ、上記のような社会実情を乗り越えるため、法務省は、平成24年4月から、離婚届の書式に「親子の面会方法」や「養育費の分担」の取り決めを記載する欄を設けました(もっとも、記載をするか否かは任意とされています)。


*家庭裁判所の状況*
これらの流れを受けて、家庭裁判所における離婚調停・面会交流調停などにおいても、面会交流へ向けての合意形成が強力に推進されるようになりました。  しかし、日本弁護士連合会がその意見書(平成25年11月21日付)においても指摘をしたとおり、「面会交流調停の早い段階から面会交流実施についての強い説得が行われるなど合意形成を急ぎすぎる例,高葛藤の父母間の事案において第三者による支援の見込みのないまま審判により面会が命じられ履行不能となる例,DV事案や児童虐待事案への配慮が不十分な例など,課題のある例も少なからずみられるのが現状」といえます。  養育費についても、その算定金額が低額にすぎ育児負担の実態に即しないこと、「養育費・婚姻費用の簡易算定方式・簡易算定表」が適切な改訂・事案に即した修正、矛盾の解消などがなされないままに利用され続けている問題もあります。  また、養育費の取り立てについては、完全に権利者個人の問題として放置され、権利者の経済的困窮・単身世帯としての時間のなさ・調査能力の不足、義務者の転居・転職など様々な事情によって、権利行使が実質的に不可能ないし困難となっている場合が非常に多くあるように思われます。


* 私達の願い*

このように、民法改正後も、面会交流、養育費に関しては、様々な課題が残されています。 私達は、行政・司法関係者、当事者など社会全体の努力によって、養育費についても、面会交流についても、より多くの夫婦・親子が利用をしやすく、かつ子どもの福祉に適したに制度や施設の拡充がなされていくことを期待します。



※日弁連意見書に関しては、別稿「日弁連意見書『養育費支払確保及び面会交流支援に関する意見書』が出されました。」に記載をします。

※日弁連意見書
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2013/opinion_131121_6.pdf

(郷田真樹)
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