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アスベスト被害の根絶と被災者の全面救済に向けて 〜九州建設アスベスト訴訟〜

 気付かないうちに長年にわたって毒物を吸い込み、その毒物が原因で死に至る病(肺がんや中皮腫など)に罹ってしまった・・・何十年と建設現場で働いてきた大工、内装工、左官などの建設作業者の方々が今、こうした恐怖に晒され、現実に病気と闘い、また、無念にも亡くなってしまっている・・・こうした悲惨な被害実態があるのをご存じでしょうか。

 アスベストは、目に見えない小さな鉱物で、体内に取り込むと肺の機能に大きなダメージを与える、とても危険な毒物です。
 かつて、アスベストは耐火性、防火性、防音性に優れていて、しかも価格が安かったので、建築資材メーカーがこぞってアスベストを使って建材を製造、販売し、多くの建設現場に使用してきました。また、国も、アスベストが含まれた建材の有用性を法令上で認めて、その製造、販売を積極的に後押ししてきました。

 このアスベストを建設作業中に吸い込み、生命を落としかねない重大な病気に罹っている方、または亡くなった方の遺族たちが原告となって、今、国とアスベスト建材メーカー数十社を相手に損害賠償請求訴訟を起こしています。
 私は、事務所内の数名の弁護士と共に弁護団に加入し、活動に取り組んでいます。

 国や建材メーカーの責任は、アスベストの危険性を知りながら、製造・販売をやめず、やめさせず、その上で現場に垂れ流しにしてきた、この一点に尽きます。
 国内外の医師や研究者たちが、戦前からアスベストの危険性についての研究を深め、いろいろな学会や論文で発表し、また、国も危険性に関する調査をしてきました。
 「知らなかった」「対策のとりようがなかった」「製品として優れていたから仕方がなかった」という言い訳は通用しません。人の命がかかっているのです。

 中学生のときに、音楽室の天井が綿みたいにフワフワとしていたのを覚えています。当時はフワフワの正体が分からず、掃除の時間にいたずらして箒で突いていました。あれが毒物だと知っていたら、当然ながらそんないたずらをしなかったでしょうし、そもそも、学校の建設に際しても使用されなかったはずです。

 数日前、別の案件で建物の解体現場に立ち入ることがありました。
 建物がショベルカーでバリバリと取り壊されていき、散らばった建材はクレーン車で大型トラックに積み上げられていきました。
 立ち入っていた時間はわずか5分くらいでした。十数メートル離れた場所にいても、粉々になった建材や埃がもうもうと立ちこめ、目と喉が痛くなり、息苦しくなりました。
 原告さん達は、こうした過酷な環境の中で、何十年もの間、何百という現場を渡り歩き、真面目に仕事をしてきました。一生懸命働いた代償が「死に至る病」としたら、なんとむごいことでしょう。

 建設アスベスト訴訟は全国各地で提訴されていて、先月、横浜地裁で全国初の判決が出ました。
 裁判所は、国や建材メーカーの言い訳を鵜呑みにし、一切の責任を認めませんでした。
 この不当判決に屈することなく、アスベスト被害の根絶と被災者の全面救済を勝ち取るまで、全国の原告さん達、弁護団のメンバーに連帯のエールを送ると共に、私たちも真剣に闘い続けます。

(柏熊志薫)
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